舞茸の話

 

f:id:fujita2444:20130929084134j:plain

 
舞茸の話。
 舞茸はナラの木に生ります。
 初めての舞茸採りは、祖父が毎年採っていた木の場所を祖母から教えてもらって実現することができました。以降、祖父が知っていたナラの木を、祖父の日記を解読しながらコンスタントに舞茸を採ることができています。
 きっかけは10年前、山と共に生きた祖父の死後、舞茸を誰も採ってきてくれなくなったので、
やむを得ず、私が山へ入るようになりました。
舞茸の場所は、親兄弟にも教えないそうなので、この辺のキノコ男たちは、行き先も教えずに1人で山に入ります。
 
 祖父の死んだ翌年の秋、9月22日のことでした。
祖母が独り言を言いました。
祖母:「あそこのマイタゲ、そろそろおがってらべな~。」
私:「あそこってどこ?」
祖母:「××の山の○○」
私:「おろ~~」
祖母:「あそこの山の沢ケンドがら、うって行げば、おっきた栗の木あるんだね。
そっから右さ入って行げば、左がら沢流れで来るんだばって、沢、越えねぇで、
デワの方さデワの方さ下りでしばらく行げばいい。
そうすれば、2本、並んで1本だげ腐ったナラの木があるはんで、その足元をぐるっと回って見れ。」
私:「了解いたしました。」

で、嘘みたいな本当の話ですが、その言葉通り、マイタケをゲットすることができました。
今思うと、ビギナーズラックってやつでした。

それからは、祖父の日記を読んだり、葉が付く前の見晴しの良い時期に山を歩いてナラの木をリサーチしたりしながら、
もうかれこれ8年、毎年舞茸を採ることができています。あと2年ぐらいで、一人前のキノコ男になれるかもしれません。
 
 ただ、毎年採り続けてはいるのですが、他に少なくとも数人の人が同じナラの木を知っているようで、私が採る前に採られていることもしばしばあります。大きくなるまで待とうと思い、採らずに残して来ると、いつの間にか無くなっているのです。最初はよく分からなかったのですが、10年近く観察してみると、私だけが知っているナラの木というのは、残念ながら1本も無いということが分かって来ました。
 毎年確実に食べごろの舞茸を採るには、どうにかして誰も知らないナラの木を見つけておきたい。
春先の見通しの良い固雪の時期に、何度か山を歩いてナラの木を探してみましたが、標高の高いところには、ナラの木がほとんど無いことが分かって来ました。
 ということで、今度の冬には、標高の低いところに的を絞ってナラの木を探して歩こうと思っています。そんな訳でこの秋も、新たな開拓をせず、今知り得ているナラの木だけを巡ることに専念しています。
 他に少なくとも数人の人が同じナラの木を知っている、と書きましたが、最近、その数人の中の一人に山で遭遇しました。山の中は薮になっており見通しが悪いため、姿は見えにくいのですが、ガサガサ、ドシドシと人が歩く気配は遠くからでも分かります。誰かいるなぁと思いながらかまわず舞茸探しをしていると、向こうから「オーイ!」という声がしました。私も「オーイ」と返事をしました。「舞茸あったかー?」と聞かれたので、「あったどー!」と答えました。
すると、
向こう:「あらぁ?」
私:「ん?」
向こう:「ちゅおりんだがー?」
私:「あー。んだー。」「なんだ、おじさんかー(苦笑)。熊かと思ったよ(爆)。」

祖父の息子と祖父の孫による舞茸争奪合戦でした(笑)。
ライバルは、意外にも身近に居ました。